私の本棚には一田憲子さんの手がけた書籍がいくつもあります。
「人と暮らし」をテーマに多くの取材をしている一田さん。そこに私のアンテナがよく反応してしまうのです。そして何より、風が通るようにそっとその人らしさを吹き込む一田さんの文章が好きです。
今回はそんな一田憲子さんの”書く”をテーマに綴った『暮らしを変える書く力』を紹介します。一田さんの文章を書くうえでの心構えとプロセスが綴られています。
自分の言葉を見つける
冒頭のことばから、早速ふむふむと納得。
小説や記事を読み、感動したり、理解したことをいざ誰かに伝えようとすると、スルっと自分から逃げていってしまう。これ、何度も経験しました。伝えたいことをこの温度感のまま言葉で表現するのって本当に難しい。言葉選び、構成、リズム…。これだ!と思うものに仕上がるまで、私はまだまだ時間がかかります。ただ、その”言葉を見つける”という苦しい工程を経ることで、確実に自分のものになっているという実感はあります。
まずはこの3つを意識したい
さて、そんなまだまだ”書く”ということに初心者の私が本書を読み、まずはこれは心に留めておこうと思ったものをメモ。
たとえ個人の体験を綴るにしても、読み手が自分のなにかと関連づけ受け取ってもらえるような文章が理想。確かに、私の読書の楽しみの大部分は「共感」にあります。
書き手の視点や感覚を押し付けるのではなく、そこに読み手が想像できる余白を残しておくことが大切。「私は」「私が」という主語を極力なくすことがポイント。
話が移るときに読み手がついてきやすいような、つなぎの文章をいれることが肝。また、この”合いの手”により、書き手が読んでほしい方向性にゆるやかに導くことも可能。
まずはこの3つを意識し、読む人の興味を引き、飽きさせず、かつ伝えたいことが伝わる文章を目指し日々鍛錬していこうと思います。
「書く」ことの奥深さ
事実を伝えるという場面において、「書く」という方法は不便かもしれません。映像や音声で伝えれば一瞬で伝わることも多くありますから。でも、見えないものを伝える手立ては「書く」ことにしかありません。それは他人に対しても、自分に対しても。
本書で一田さんは繰り返し、「書く」ということは、見えないものに輪郭を付ける作業だ、と表現しています。人から聞いたこと、調べたことをそのまま受け取り、ふわっと分かったような気になるのではなく、ちゃんと自分の言葉にしてみる。その作業が自分の解釈となり、思考の足跡になるのです。つまり、「書く」ということは、頭で「考える」ことであり、頭に「残す」ことでもあるのだと、「書く」ことの奥深さを知りました。
コメント