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ビジネス書

失敗の科学  マシュー・サイド

『失敗の科学 ~失敗から学習する組織、学習できない組織~』という本を読みました。

本書は失敗の構造や様々な業界における失敗の捉え方を紹介しています。

豊富な事例とデータは説得力があり、紹介のとおり、小説のように面白い!内容でした。

失敗はデータである

本書の主軸となるのは、医療業界と航空業界の失敗の捉え方の違いです。

命を預かる医療業界において失敗はあってはならないもの。

その責任の大きさは時に歪んだ方向へと向かい、恐ろしいことに、失敗の隠蔽や個人の非難、懲罰を最終着地点とすることも多くあります。

失敗の分析や見直しが十分になされず、組織の成長に繋がらない現象を「クローズドループ」といい、医療業界はこうした文化が根強く蔓延っているといえます。

一方、航空業界は“失敗は貴重なデータ”として業界全体に共有されます。失敗の原因やその過程までを細かく解析し、問題箇所には新たな運用が構築されるのです。このように、失敗が適切に対処され、学習の機会や進化がもたらされる仕組みを「オープン・ループ」といいます。

失敗を生かすも殺すも捉え方次第。その業界や組織の発展に大きく影響します。

犯人探しや罰を与える習慣からは、何も生まれないことがわかりますね。

難問は分解して対処するという発想

本書には失敗に関する興味深い理論をいくつか紹介していますが、

私が最も感銘を受けたのは「マージナルゲイン」という思考法です。

それは、大きな問題は小さく分解し、一つ一つを改善していくことで全体解決に繋げようというものです。

例として、世界的自転車レース「ツール・ド・フランス」で初めてイギリス人を総合優勝に導いたデビット・ブイルスフォード氏の取り組みを紹介しています。

世間から笑われた、イギリス最弱のチームが掲げた優勝という目標設定。これに対して、彼は具体的にどういう取り組みをしたのか。

それは、例えばこのようなことです。

・遠征先で眠る場所が変わっても、同じ質の睡眠を得られるよう、専用マットレスや枕の導入。

・宿泊前に先にスタッフが選手の部屋に掃除機をかけ、感染症の予防率を高める。

・ユニフォームは、肌に優しい洗剤で洗濯して、快適感をアップ

一見、え?そこ?と思えるような角度ですが、このような小さな改善を積み重ねていくことで、チームのパフォーマンスは確実に向上し、目標設定よりも圧倒的に早いスパンで優勝を達成したのです。

大きな課題や目標を前にしたとき、私たちはその壁に慄き、失敗を恐れ、結局前に進めなくなることがあります。しかし、そのタスクも細分化していけば、今の自分が今やるべきことが明確になり、一段一段階段を駆け上がっていくようなイメージを抱くことができるのではないでしょうか。

これは常日頃、意識していきたい考え方です。

おわりに

本書を読み終えたいま、失敗のイメージがネガティブなものだけではなくなりました。それどころか宝の山とさえ思えます。

「失敗は成功のもと」というのは、小さい頃からよく耳にした言葉ですが、「失敗はデータである」という表現なら、なにか失敗をしても、確実に収穫はあったように思え、前向きに捉えることができていいですね。

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