小説

<あの絵>のまえで 原田マハ

原田マハさんの『<あの絵>のまえで』を読みました。

人生に寄り添う絵画をテーマにした6つの短編集です。

 

アートは見る人のためにあっていいものなんだと再確認しました。

絵画を目にすると、どうしても作品のメッセージや背景知識を理解しなければと構えてしまいます。もちろんそこに面白さもあるのですが、そういうものを知れば知るほど、自分の日常とはかけ離れたもののような気がしてなりません。厳かな雰囲気に包まれた美術館は私情を持ち込ませてくれないような印象すら感じてしまいます。

本書には6つの絵画が登場しますが、作品の解説は一切ありません。主人公たちが一枚の絵を通して、人生を立ち止まり、振りかえり、再出発していく模様に焦点を当てています。そして、美術館は悩める主人公に対してとてもオープンです。

この絵を見れば、あの日を思い出す、あの人を想う。そんな人生のしおりのように絵画は私たちの日常に寄り添ってくれるものなんだと感じました。

私はなかでも『窓辺の小鳥たち』が印象的でした。夢を追い海外へ飛び立つことになった恋人を見送る”私”の物語。二人の間には昔見たピカソの<鳥籠>がありました。彼は鳥かごに描かれている鳥の絵を見て、かご越しに鳥が見えているだけ、つまり自由に飛び回っている鳥だと解釈し、”私”を驚かせました。あの絵がある限り、”私”は彼の旅立ちを応援しなければならない。でも、あの絵がある限り、二人は離れていても想い合うことができる。一枚の絵を通して互いを見つめ合う、切なくも背中を押してくれるような素敵なお話です。

全6篇、原田マハさんのお得意の「絵画」と「人生の再出発」を融合させた、とても温かい物語でした。

 

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