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小説

さいはての彼女 原田マハ

原田マハさんの『さいはての彼女』を読みました。多忙な日々に心が疲れている方、この本をお伴に旅に出ててみてはいかがでしょうか。

挫折を味わった女性の旅と再生

25歳で起業した敏腕若手女性社長の鈴木涼香。猛烈に頑張ったおかげで会社は順調に成長したものの結婚とは縁遠く、絶大な信頼を寄せていた秘書の高見沢さえも会社を去るという。失意のまま出かけた一人旅のチケットは行き先違いで、沖縄で優雅なヴァカンスと決め込んだつもりが、なぜか女満別!? だが、予想外の出逢いが、こわばった涼香の心をほぐしていく。人は何度でも立ち上がれる。再生をテーマにした、珠玉の短篇集。(本書裏表紙より)

人生を足掻く姿は素敵

この小説に出てくる女性はバリバリのキャリアウーマンたちです。努力と根性でひたすら上を目指して歩んでいたのに、それは些細なことで崩れていき、上手くやっていたと思う自分の人生も結局は独りよがりなものだったことに気づかされます。私は決してこのような仕事人間ではありませんが、狭い世界のなかで組織の一員として過ごす日々に疲れる感覚は理解できますし、自分を守るために攻撃的になってしまう部分も思い当たります。誰もが自分の思い描いたようにきれいに生きてはいけないです。失敗や躓きはあるものの、彼女たちの人生をがむしゃらに足掻く姿は素敵でした。何かを犠牲にしてすら、仕事に邁進してきた彼女たちの情熱が少し羨ましくもあります。

線を引いているのは自分

耳の聞こえる人と、そうでない自分との間には見えない線がある、とこぼすナギ。ナギの父はその言葉を一蹴します。「そんなもんは自分が引いた線だ、越えていけ」と。この言葉にハッとさせられます。これは耳が聞こえないナギだけじゃない。「自分には無理だから」、「自分とは違う世界の人の話だから」と、言い訳のように使う文句。やりたいことに対し、無理と判断しているのは自分でした。“サイハテ”と共に颯爽と風を切るナギの姿に背中を押されます。

疲れたときは旅をしたい

このブログのテーマのひとつでもある「旅」。決してどこか遠く離れた未知の場所へ行くことだけが旅ではありません。大事なのは自分の生活圏外に身を置き、しばしの非日常を味わうことです。この小説の登場人物が旅のなかで自分と全く違う生き方をしている人と出会い、刺激を受けたように、旅はときに人生の流れを変える良いきっかけになるものだと思います。

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