新聞で宮部みゆきさんの書評を読み、おもしろそう!と思い即購入。
村田智明さんの『バクトリデザイン』です。
不便を感じたらそれは”バグ”
私たちは日常生活や仕事をすすめるうえで毎日何かしらの不便や手間に直面します。本書はそれらを”バグ(不具合)”として捉え、その解決策をデザインに求めます。ずばり、「人の行為に注目すればあるべきデザインが見えてくる」という思考です。
本書に習い、私自身の生活範囲で思いついたバグをあげてみます。
会社の会議室の電気をつけるとき、複数のスイッチがそれぞれどのスポットに対応しているか分からずつけたり消したりのもどかしさ。
収納法を参考に片付けたものの、すぐに元の状態に戻ってしまうストレス。
本人の性格によるものもありますが、多くの人が「あるある」と感じていることであれば、そこに解決の需要はあるはずです。
本書はモノづくりだけではなく、サービスやシステムの仕組みもデザインによって解決できるというのです。
理論的にデザインする
著者の村田氏はデザインや芸術に強く興味を持ちながらも大学は理系に進み、物理を専攻していたとのこと。一見、両者は関係のない分野に思えるものの、著者の考えにハッとさせられました。それは、色や形を美の対象とするのと同様に、美しく無駄のない流れるような行為をデザインすることも大切、ということ。確かに道具は見た目の美しさだけでなく、使いやすさも備わっていなければ多くの人に愛される商品にはなりません。また、オシャレな商業施設が並ぶエリアであっても常に人が迷い、混乱している様は街として美しくはありません。
本書ではバグを特性によって種類分けし、徹底的に因数分解していきます。人の行為を時間を追って観察し、ユーザーが本当に求めていることを導き出していくのです。そして、ときに先回りして人の行為を自然に誘導していく仕組みを考えだし、美しく無駄のない動きを創ります。ここに理論的にデザインすることの重要性を思い知らされます。
まずはアンテナを張ってみよう
世の中のヒット商品や儲けのからくりには必ずバグを解決するアイディアが隠れています。本書はその具体例をたくさん紹介しており、どれも目から鱗のものばかり。しかしその多くは大規模な改革ではなく、あくまでも人の行為に沿った自然な仕組みを取り入れているだけです。目の付けどころを少し変えてみるだけで、仕事や暮らしに潜むバグも案外簡単に解決できるかもしれません。よくよく考えてみると不便だけど、そういうものとして片づけてしまっているものも多いはず。まずはアンテナを張ってみることから始めようとバクトリが楽しみになってきました。
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