ずっと気になっていた本。
『ぼくとわたしと本のこと』です。
本とは何かを考えるいいきっかけになりました。
私は学生の頃、今ほど本を読んでいませんでした。なんで時間がいっぱいあったあの頃にもっと本を読まなかったのだろう。学生のときにこういう本と出会っていれば、もっと違う自分がいたのでは。大人になってそう思うことがよくあります。でも、この本を読んで思い出しました。
あの頃私は忙しかった。
落ち着いて本を読む時間ももったいないほど、現実世界を生きることに精一杯でした。学校、部活、習い事、アルバイト、友達との付き合い、恋愛、家族との喧嘩。。苦労があったとかそういう訳ではなく、今なら上手に取捨選択できるようなことにも時間をかけ、楽しみ、悩み、腹を立てていました。とにかく目の前のことに必死だった気がします。
だから、行間を読むような読書の楽しみを覚えたのは、就職していろいろと自分の生きる道が安定してきた頃だと思います。
この本は産業能率大学の学生さんたち(SUN KNOWS)が「自分にとっての本とは何なのか」をテーマに書いたエッセイ集です。本をテーマにしているものの、本をよく読むという学生はあまり出てきません。しかし、本という糸口から語られる彼らのエピソードはどれもおもしろく、考え深いです。大学生の彼らにとってのリアルな”本”の立ち位置が見えてきます。そして人間関係に悩む姿や思い通りに行かずもがく姿は目に浮かぶよう。彼らもあの頃の私のようにとても一生懸命いまを生きていると感じました。
私にとって読書の楽しみのひとつは「共感」にあります。小説に出てくる一節が当時の心の痛みを蘇らせたり、なぜか脇役の彼女に強く共感を覚えたり。そして、この微妙な心の動きをどうしてこんな絶妙な言葉や描写で表現できるのかと感動したりします。でもそれは現実世界を懸命に生きているからこそ味わえるものです。
本の内容そのものに学ぶよりも、その本との出会いの過程にある人との繋がりや苦い経験にこそ、教えられるものがあり、今後の読書の楽しみの種があるのだと感じました。
本の素晴らしさを改めて教えてくれたSUN KNOWSさんたちにありがとうと言いたいです。
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